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「フム」
と、加藤巡査は声を落した。彼は、さきほど事が容易でないと思つたから、とり敢あへず本署に電話をかけた、署長はじめ自動車で来ると云つていたから、まごまごしているうちには着くだらう、さうなるとこのまゝでは納をさまりがつかなくなる、怪我人を出さぬうちに事が静まるのは自分の望むところであるし、皆さんの方もいゝではないか――。
と云つた。
ほんとにさうだ、忙しい身分なんだ、どうしてそこに気がつかなかつたらう、――と、徳次は瞬間本気にさう考へ、自分のはしたなさを悔くやんでいた。
「それでは、又あらためて伺ひます」
徳次は急に目くばせをした。
男は眼を閉ぢたまゝだつた。
膿盆だの鋏、脱脂綿の袋などがまだ散らかつたまゝになつているのを片づけはじめた。
「おう、これか」
別に会ふ気がなかつたから、と云ふ代りに、
二人は間近かで眩まぶしげに眺め合つた。そのまますれちがつて、二三間行きすぎた頃、房一が見送り気味にふりかへるのと、相手が車の上から首をねぢ向けるのと同時だつた。そのはずみに男はひよいと地上に降り立つた。
「御病人はどちらで?」
と、房一は練吉の顔を見て思ひ出したらしく、